門前市郎によろしく

ジレッタが残らないのが悲しすぎて覚書。まだ途中。一人の記憶力では限界があったので色んな人の記憶を頼りに書かれています。自信のないところも多々あるのでご指摘お待ちしています。そのうち絵を描く方のおたくの舞台セットメモが上がるかもしれない。

上を下へのジレッタ⑥

ナレ「敵対勢力にジレッタを奪われることを恐れた日本政府は、山辺を指名手配した。
しかし時すでに遅し…
山辺はジャンボジェットの貨物室に身を隠して、一路スイスを目指していた。」
ウッドベースのケースの中で悶えている山辺
ナレ「しかし…誰だって24時間もの間、こんな狭い場所に閉じ込められていては…」

『機内のシンパシー』

上の貨物室で苦しむ山辺と、下の客室で苦しむ乗客とCA・パイロット。

“容赦ないハイプレッシャー”
山「ええいもう見つかったって構わねえ!」
山辺クラリネット?を見つけ、一回吹くまねをしてから、口側を下にして放尿。
曲調が変わる。
“ムーンリヴァー…”
解放される乗客・乗員。

再び曲調が変わる。全員ハイテンションになる。
着陸。
税関で止められる山辺(の入ったウッドベースケース)
職員“中身を拝見”
山“中身は楽器”
職“念のため”
山「楽器だよ!」

山「くそー!ここまで来て!どいつもこいつも眠っちまえ!」

曲調が変わる。(テンポが遅くなる)
“他人だったあなたが今…”
全員寝る。
山辺、ケースから出る。
山「??」

全員突然起き上がり、“ミラクルインザスカイ!”で一瞬復活。
今度こそ一斉に寝る。*1

舞台両脇の文字「ライン川沿いにある門前のアジト」

門「そいつはきっとジャンボジェット機の爆音が原因だ!」
山「キミちゃん!」
チ「オンちゃん!」
門「つまり爆音に含まれる超音波がお前の脳を刺激した」
山「またこんな顔に?」
チ「ごめんなさい…」
門「そうしてその爆音の中にいた乗客全員が、ジレッタを体験したってわけさ!」
チ「あんたがいないとどうもね」
山「なんか食いに行くか」
チ「うん!」
門「こいつはすごいことだぞ!もうヘッドホンなんかいらない、お前はもう自由自在に」
山「スイスの名物ってなんだろうな?」
チ「チーズとかかしら」
二人、上手にはけようとする。
門「聞けよ!!」

門前、二人に歩み寄る。
門「なんだお前ら顔を見合わせれば食い物の話ばっかり!これが一世を風靡したアイドルと、かのジレッタアーティストの会話か!?」
チ「私はほとんどデビューと同時にコケました」
山「俺だってもうジレッタとはすっぱり縁を切る!」
門「お前はとうとう覚醒したんだぞ!これで世界中にジレッタを見せてやれるんだ!」
山「世界中にジレッタを見せた後、次はどこに逃げるってんだ!?ああ、宇宙か!?ハッ馬鹿らしい、俺はもう二度とジレッタなんてやんねえ!」
チ「気持ちは分かるよオンちゃん」
座り込む山辺に寄り添ってチエも座る。
門「ジレッタをやめて何するってんだ?」
二人へ近づく。
門「お前ら結婚するんだろ?一体何で食っていくつもりだ?漫画か?日本でうけなくてもスイスではうけるってか!?」
山「そんなポンポンあれこれ聞くな!」
チ「それにジレッタをやってたって、ちっともお金が貯まりません!」
門「頭を使えよ頭を。こいつが眠れと念じただけで空港中の人間が寝ちまったんだぞ。ということはだ、例えばスイス銀行に、俺たちの貯金が1億マルクあると思わせて!」
固まる門前。
門「……小さい。小さすぎる…。これが天才門前市郎の発想かァ!!!」
チ「誰と話してるのかしら」
山「自分で自分のこと天才って言うくらいだから頭おかしいんだよ」
門「待てよ…お前言ったよな!宇宙へ逃げるのかって!」
山「!?言ってねえ!」
チ「言ったわよ!」←山辺
後ろの壁が開く。窓越し?の大きな月。
門「いっそ地球を飛び出して、宇宙へ目を向けるんだ!こういうのはどうだ?月が接近してきて、しまいには地球に衝突する。世界中にそう思わせるんだ」
山「そんなことしたら一体どうなっちまうんだよ…」
門「そいつはさすがの俺にも分からねえ。パニックになって崩壊するか、あるいはまた新しい世界が生まれるかもな」ヒヒヒ、的な笑い声。
チ「だめよそんなことやっちゃ!」
門前、山辺の両肩を掴む。
門「なぁ山辺、俺たちは何のために日本を出たんだ?」
山「指名手配されたから…」
門「そうじゃない!お前の表現を受け止める器として、日本は小さすぎたからだ…!山辺、お前は芸術家だろ。芸術家として生まれたからには、大きなことをやり遂げたいと思うのが普通だろ…!*2
チ「オンちゃん駄目よ!この人勢いだけで喋っ」
門「黙ってろチエ!!これは男同士の魂の会話だ!!」
門前、チエに怒鳴って黙らせてから、山辺に向き直る。
門「え?どうなんだ山辺
山「…そりゃ俺だって!いつかは一発当てたい、けど…」
門「…決まりだな。タイトルは『地球最後の日』。決行までにイメージを固めておけ。世界中が信じて疑わない、地球滅亡のイメージをな」
門前、下手に走り去る。

山辺、暗い顔で俯向くチエに気づく。
山「だ、大丈夫だよ!いくら俺の感度が上がったからって、世界中が超音波を受信するなんて」
チ「オンちゃん…言いたいことは山ほどあるけど…」
山「おお、言ってくれ!」
チ「でも今は…とにかく…お腹が空いて…」
山「ああ、そうだな、続きは腹いっぱい食ってからにしよう!」
チ「そうしてもいい?」
山「いいとも!キミちゃんがいつも満腹でいられること、それが俺の、いちばんの望みさ」
はけていく二人。

文字「リエの新居」
リエがソファに座って上手から流れてくる。
下手から歩いて現れる門前。
門「へえ〜、バイヤーってのは、そんなに儲かるもんなのかい。ご主人は麻薬でも売りさばいてるんじゃないのか?」
リ「不可能だわ。世界中の人間がジレッタを体験するなんて」
門「明朝、 アメリカがロケットを発射する。」
リ「まさか」立ち上がる。*3
門「有人ロケットが、初めて火星に向けて飛び立つんだ。当然世界中がテレビに釘付けだ。その様子はアメリカの宇宙基地から全世界に向けて放送される。じゃあその基地から超音波を発信したとしたら?」
リ「そんなこと」
笑い飛ばそうとするも、「この俺にできないと思うか!?」と門前に遮られ深刻な顔つきに。
門前、上手側へ移動しながら
門「地球が滅亡するとなりゃ、大恐慌どころの騒ぎじゃない。特に取引で食ってる人間なんかは、真っ先に気が狂うだろうよ」
リエの座っていたソファに腰掛ける。
リ「…主人のことを言ってるの?」
門「ああ、そういえばご主人は、世界を飛び回るバイヤーだったよねぇ」ニヤニヤしている。
リ「脅迫するつもり!?」
門「いや、俺はただ今後の予定を」ニヤニヤしている。
リ「何が狙いなの!?」
門前、真顔になり音楽がかかる。

『ただ1つの真実』
言い合う二人。
追い越したり振り返ったり押しのけたり追いかけたりしながら、徐々に下手へ移動。
二人“Tell me "I need you"? "Never let me go?"”

門「…だったら地球が終わる間、せいぜい旦那に言い聞かせてやるんだな」上ずった声から一転、吐き捨てるように「これは全部妄想だって!」
リ「待って!」
下手へ走り去る門前。
残されたリエ、うつむいて「…そんなことさせないわ(顔を上げ)絶対に!」
リエ、追うように走り出す。

キ「オンちゃん、あんた明日本当にやるつもり?」
山「〜っキミちゃんが言ったんだぞ!俺が成功するまで結婚はしないって」
キ「世界中にご迷惑をかけることが成功?」
山「その先にあるんだ成功は!みんなが目覚めて、全部が俺の仕業だって知った時、世界中が俺を見直すんだよ!」
キ「先生みたいなこと言って!」
座り込むキミ子。
山「…ほら、チーズでも食べて機嫌直せよ」
鞄からでかいチーズが出てくる。
キ「ありがとう!」
車のブレーキ音と勢いよくドアの閉まる音。
山「誰だ!?」
キ「あの人確か先生の…」

下手よりリエ登場。
山「ああ、門前の別れた女房か」
キ「何かご用ですか?」
リ「…能天気な顔して。(客席側に向き直って腕を組む)いい気なもんね」
山「何だよいきなり!」
リエ、キミ子を見る。「…醜い顔」
山「何だよお前さっきから顔のことばっかり!」
リ「最初からその顔がお相手なら、私もあいつの前で醜態晒さずに済んだってことよ」上手側へ移動、腕を組む。
キ「…行こう!オンちゃん!」
山辺の腕を掴んで下手一段下へ。
リ「ええあなたは消えて。私が用があるのは山辺さんの方だから」
キ「…!?オンちゃんに何の用だよ!」
リ「あなたに言う必要が?」
キ「言いなよ!」
リ「あなたにだって、言えないことの一つや二つあるでしょうに!」
キ「私に?ないよ!」
リ「じゃあ山辺さんは知ってるのね?あなたと彼の関係を」
ぎくりとなるチエ。
山「彼?彼って誰だよ」
リ「デビューに失敗した後も毎週末小百合チエになっていたのは何故?」
キ「…行くよ!」再び山辺の手を引く。
リ「ずるい女!嫌がってる振りして、上手に二つの顔を使い分けてたんだわ」
キ「…それ以上私のこと侮辱しようってんなら、二度とその口きけないようにしてやっからな!」
リ「やってごらんよ。ブス」
チーズを投げ捨てるキミ子。
山「あっチーズ…」
キミ子ビンタ→リエビンタ返し。吹っ飛ぶキミ子。ほおを抑えながら足をじたばたさせ「このアバズレ!ぜってえ許さねえかんな!」
上手手前からはける。
山「キミちゃん!」
リ「あなたは私と行くの!」
リエ、山辺の腕を引く。
山「いやそういうわけにも…」
キ「待てこのアマ!」
キミ子、上手から丸太を持って登場。
山「うわ!何持ってんだよキミちゃん!」
キ「忘れたの!?あたしはミス丸太ん棒よ〜!」
山「それ意味違うだろ!」
キ「その手を離せアバズレ〜!」
山辺とリエの間に丸太を振り落とす。
左側セットの壁に丸太をぶつける。
キ「よくもあたしの男に〜!」
リ「あなたに言われる筋合いないわよ!キャー!」
なんやかんやで最上段まで追い詰められる。
山「キミちゃん落ち着けって!川に落ちたらどうすんだ!」
リ「聞いて山辺さん!あなたの彼女はずっと前から門前と!」
キ「黙れこの女〜〜!」
空振し、川へ落ちるチエ。「キャーッ!」
山「キミちゃん!キミちゃーーん!!」

ナレ「ライン川の流れは速くー…チエを瞬く間に遥か彼方へと運び去った…」
後ろの壁が閉まる。
ナレ「偶然通りかかった遊覧船に救出された時…チエは既に意識不明の重体であった」

AMBULANCEのカウンターとナース上手端に登場。門前は下手から。
ナ「門前さん、シカゴから国際電話です」
門「ありがとう…。…門前だ」
下手端にライト。液体窒素的なモクモクの中、後ろに三人と足元に電話機を持った一人を従えたマフィアのボスが椅子に座って登場。
ボ「よぉ先生…調子はどうだ」
門「最悪だ」
ボ「そいつは良かった。こっちは万事順調だ。宇宙基地のアンテナに細工してやったぞ」
門「山辺のフィアンセが瀕死の状態なんだ」
ボ「そいつは良かった。これで宇宙中継が始まった途端、全世界に超音波がばら撒かれるって寸法だ」
門「山辺は今ジレッタどころじゃ」
ボ「そいつは良かった!」
門「あんた俺の話を聞いてんのか!」
ボ「俺たちファミリーはなぁ!このビジネスに大金をかけてんだ。ミスタージレッタのツレがくたばろうが何しようが、もう後戻りはきかねえんだよ!」
門「…脅したって無駄だぞ。この門前市郎は、相手がギャングだろうと大統領だろうとよ…」
ボ「ロケットの発射時間はそっちの時間で明朝……」
門「……っ」
ボ「…何時だっけ?」
ボスの後ろの三人がぎくりとなり、揉める。
ボ「おい喧嘩はやめろ。喧嘩はやめろ」
電話機を持っている人「6時です!💦」
ボ「6時だ。それまでに準備を済ませておけ」
門「ちょっと待ってくれよ…!」
ボ「待てねえな!しっかり見張ってるからな。どこにも逃げられねえぞ…」
門「もしもし!?もしもし!?…くそっ」

上手からナースがもう一人登場。
ナ2「門前さん!チエさんの意識が!」
門「戻ったのか!?」
壁が開いて病室登場。山辺が寄り添っている。
医「いやはや驚きです」
門「じゃあチエは…!ありがとうございます!」頭を下げる。
医「急に美人になった」身体をずらしてチエを指し示す。
門「そっち!?」

チ「オンちゃん…ごめんねこんな時に…」
山「いいんだよ!もう何も喋んな!」(多分がんばって)笑顔を見せている山辺
チ「私、あんたと会えて良かったよ」
山「どうしたんだよ急に…俺の方がよかったよ!」
チ「なんだか、ずいぶん遠くに来ちまったねえ…」
山「ああ…そうだな、元気になったら一緒に田舎に帰ってのんびりしような」
チ「それはちょっと…無理かもしれない…」
山「無理って、何が無理なんだよ!」

チエ、布団をばっと除け、前に歩み出て歌いだす。

『食うか飢えるか(リプライズ)』

二人見つめ合いながら歌う。二人だけの世界。
山“現実は味気ないけどいいの?”
門“だからこそのフィクションさ!”
チ“派手で薄いニセモノより地味なリアルを見つめていたい”
門“そんな奴いやしない!”
門前の声は全く届いていない。

見つめ合う二人の間に立つ門前。
門“恨んでいるのか?俺と出会った運命を”
二人“ルルル リアル”
見えてないように、見つめ合ったまま段を上がる二人。取り残される門前。*4

中央で歌う白い服の二人と、脇で俯く黒い服の門前。

ベッドに立つチエとベッドの隣に立つ山辺が、片手をつないで見つめ合って歌い終える。手が離れて、チエが倒れこむ。
医「…ご臨終です」
山「キミちゃん…?嘘だろ!キミちゃん!」
泣く山辺
山「おい門前説明しろ、どうしてキミちゃんが死ななくちゃならねえんだ!」
門前、胸ぐらを掴まれる。
門「分からない…」
山「答えろ!」
門「俺の専門はフィクションなんだ!現実については何一つ説明してやれない…!」
山「ちくしょお!だったら俺も死んでやる!」
門「馬鹿言うな!」
山「キミちゃんがいないのに生きてて何の意味がある!」
再びチエのベッドにすがりつく山辺
門前、腕時計を見る。
それに気づく山辺
山「…おい。こんな時に時間が気になるか…?」
門「…いや」
山「お前って男は、この後に及んでまだ俺にジレッタをやらせる気か!?」
門「やりたくないなら…やらなくていい。中止にするまでだ」
山「出来もしねぇくせに!」
門「出来るさ!…殺されるかも、しれないけどな」
下手へと去ろうとする門前。
山「…やるよ!」
門「え?」
山「やってやる!キミちゃんのいない世界なんてめちゃくちゃにぶっ壊れちまえばいい。完全に消えちまえばいいんだ!」
山辺の肩を掴む門前。
門「…そうだ…消せ、消せ!地球ごと吹き飛ばししまえ!」

スクリーンにロケット発射のカウントダウンが映る。
下手端、装置に座った山辺と門前。
マフィアのボスとの電話。
ボ「いよいよだ。準備はいいな門前」
門「ああ、いつでもオーケーだ」
ボ「ニューワールドの始まりだ…!グッドラック」
カウントダウンが始まる。
門「行くぞ山辺…」
発射。
門「今だ!始めろ!!」

アヴェジレッタ…と唱えながら銀フードマントのカンパニーが両端に縦に並ぶ。
銀色の布が奥から手前へ地面を覆う。
フラフラしながら中央に立つ門前。
門「ハハハハ…いいぞ山辺…いい感じだ…!さぁ月よ、思いっきりぶつかってこい!!ハハハハハ…」

突如、山辺の台詞がリフレインする。「キミちゃんのいない世界なんて、めちゃくちゃにぶっ壊れちまえばいい、完全に消えちまえばいいんだ!」「だったら俺も死んでやる!」
はっとなる門前。
門「山辺、お前!」
近づこうとした時、強い風に煽られて倒れる。

4段目まで駆け上がる門前。
3段目上手からリエ。
門「リエ!?」
“いつだってサプライズの仕掛けで頭がいっぱい…”
暗くなり、銀マントが銀の布をふわっと浮かせている間にリエはける。
3段目下手から有木
“Hey, Mr.Yesman…”
はける。
3段目に降りて倒れる門前。4段目上手からジミー。
“Keep on lady, 君が見つめているうちは…」
1段目まで転がり落ちる門前。
4段目下手から竹中社長。
“頂点までの長い旅路を嘲笑う 一瞬のうちに起こる無情な転落…”
よたよたし、再び倒れる門前。立ち上がる。3段目上手からチエ。
“I love you…”

山辺が起き上がり、装置を外して近寄る。中央で見つめ合いながら歌う二人。
下手で膝をつき、放心?絶望?している門前。スクリーンに車が飛んでいく様子などが映る。
二人手を繋いで奥へ消えていこうとする。
門前、客席側に手を伸ばしながら、
門「行くな、山辺!!お前が消えちまったら、誰がジレッタを止めるんだ!!」
二人が消える。
強風が吹く。
壁の淵に掴まって耐えるも、また中央に投げ出される門前。銀フードマントの人々が門前に近づく。
門「よせ!俺は行かねえぞ!!」
振り払おうとするが、4人くらいに捕らえられて奥へ引きずられていく。
門「これは妄想だ、全部妄想なんだ!!」
舞台の一番奥へ。
四角く閉じていく。
門前、手を伸ばす。

「現実!!」

四角く空いていた空間が完全に閉じて、暗闇に包まれる。
静寂。

ビルの地下のセット。
地上の大混乱の騒音がうっすら聞こえる。
超音波のような音が絶え間なく鳴っている。
中心の柱の上から「つづく…」の看板が降りてくる。
無音になり、看板にだけライトが当たる。後ろの柱に影が映る。
本のページのようにぱたんと一枚めくれて、「おしまい」に変わる。

閉幕。

*1:花瑛さんだけ大の字で寝るのが最高にかわいい

*2:ここの台詞ちっとも思い出せないので想像です、教えてください

*3:門前の行動に対してやたらと察しのいいリエほんと好き…頭の良さと付き合いの長さ…

*4:ここでしばらく保っていたオタクの涙腺があっけなく崩壊する

上を下へのジレッタ⑤

上手手前に門前と装置に座った山辺が戻ってくる。
門「こんなもんで勘弁してやるか」 スイッチを切り、2人に近づく。
門「いかがですか?初めてのジレッタの感想は」
秘「門前、貴様〜!」
掴みかかろうとする秘書。
竹「さいっこうの気分…」
秘「え?」
竹「めいっぱい、元気をもらったわ。郁子、明日からも頑張ります!」
秘「郁子ぉ!?」
竹「I、ラーアーブーウ(LOVEを身体でつくりながら)(Eが拙い)、K、U、K、O、イクコ」
スペルをエアーで書いて、Iは??となっている秘書。
アハハハハッと手を上げて下手奥へ走り去る竹中。
秘「社長がおかしくなっちゃったぁ!」
追いかける秘書。
門「お前は一体何を見せたんだ?」
門前、走り去った方を見つめながら山辺に問う。
山「すべてあいつらがキミちゃんにしてきたことさ」
門「俺が思ってる以上だな、ジレッタの威力は…」
山「ああ。だから覚えとけ。あんたを発狂させることだって、俺には簡単にできるんだぜ」
門「あ?」

突然、檻の前部分だけのセットが上手から登場。下手奥で山辺を指差す秘書がライトを浴びる。
秘「竹中プロは、我が社の社長竹中郁子の精神を崩壊させた山辺音彦を、脅迫罪及び傷害罪で告訴するーッ!」
山「なんでそうなんだぁ!?」
山辺、檻のまま上手にはける。
門「山辺!」
裁判官「証人はすみやかに証言台へ!」
門「…失礼いたしました…」
脇に引っ込んでから証言台セットを持ってくる門前。
検事「ではあなたは、今回のこととジレッタとは無関係だと主張されるんですね?」
門「ジレッタは合法的な催しです。訴えられる筋合いはありません!」
検事「しかしあなたは一般公開しているものとは別のジレッタを竹中郁子に見せた!」
門「ジレッタはあくまでも娯楽なんです!そうだ、みなさんも一度見に来てください(と傍聴席へ)。平日の昼間が狙い目です!」
裁「神聖な法廷で宣伝はおやめください!」

裁「最後に被告人、言っておきたいことはありますか」
山辺が現れる。
山「とにかくまーあ?なんでこんなことになっちまったんだか。みなさんも妄想くらいするでしょう。色々上手くいってみんなにちやほやされるとか、死ぬほどムカつく奴がひっでぇ目に合うのを想像して、ニヤニヤするとか?(ほら!って手で示して判事に訴えるポーズの検事)」
門「山辺
山「好きな子といいムードになって、一発やっちゃうとか!」
門「山辺!」
騒がしくなる法廷。
山「一発じゃおさまらねえか!二発、いや三発!思いつく限りの体位でやっちゃうとか!!」
門「山辺!!」
裁「静粛に!静粛に!!」
*1
裁「これより判決を言い渡します。被告人山辺音彦は…無罪!」
全員「……ええ!?」
もみ合いになる傍聴者と検事と判事。
山「門前!俺無罪になったのか!?」
門「誰一人納得してないけどな!」
山「やった!無罪だ!」
門「行くぞ!モタモタしてると判決がひっくり返りそうだ!」
もみ合いながら傍聴と検事と裁判官が下手にはける。門前はける証人台を持って上手へ引っ込みすぐ出てくる。
美女たちが山辺を待ち構えている。

『ジレッタに出して』

門前と山辺、舞台中央で囲まれる。
門前、山辺を手招きして1段目に集まる。顔を見合わせ
“なんで急にもててんだ”
正面を向いて“Hoo-”*2

有木登場。
有“歌手志望女優志望”…
なるほどな、という顔になる門前。
門“ジレッタに出たいってことか”
門前下手で囲まれ、ちょっと驚いた顔。

女“彼のハートを射止めれば〜なんたって今のジレッタクイーンはこいつ!”
スクリーンにキミ子の顔が大写しに。
“史上最弱のクイーン”

山「おい!キミちゃんを笑い者にするなこのブスども!怒」
門「いやお前、どう見たってこっちの方が…(笑)」
有「ジレッタへの出演希望者は後を立たへん」*3
門「ジレッタは妄想ですから。山辺次第でいくらでもルックスを補正できる」
有「だからって実物が変わるわけじゃないだろう」
門「彼女たちにしてみればどっちでもいいんですよ。それが本物だろうと、偽物だろうと、可愛いとさえ言ってもらえれば」
有「なるへそ」

チエが登場、上手1段目から走り寄ってくる。
チ「オンちゃん!」
山「キミちゃん!」
チ「無罪になったのけ!?」
有「君はいつぞやの美女!」
チエ、そっぽ向いてる女たちを振り返る。
チ“何か御用?このパッとしない女ども”
山“おお、言ってやれ!👎”

女“途中参加の新入りね…”*4
歌いながらだんだん後ろに下がっていく。
腰に手を当てて、
“勝負は…お預けね!”
バブリーに踊りながら去って行こうとするも、チエに殴りかかられそうになり慌てて走り去っていく。背後の壁が閉まる。

門「相変わらずすごい威力だなー、こっちの顔は」
まだ怒った顔のチエ。
山「その様子じゃ、また何日も食ってねえのけ?」
チ「裁判の様子が気になってねぇ…」
山「よし!ラーメンでも牛丼でも食いに行こう!」
チ「シャバに戻ったお祝いね!」
門「その前に言うことがあるだろ!お前を無罪にしてくださった恩人に!」
山「あっどーもお世話になりやしたー」
チ「じゃあまたご飯の後で」
二人、上手へはけようとする。
有「いや!さすがに私一人の力では無理だった。さるお方の協力がなければな!」
門「さるお方とは?」
有木が手で示すと後ろの壁が開く。

塩釜首相が登場。官僚に囲まれて椅子に座っている。
門「塩釜首相!?」
分かってない様子の山辺
チ「総理大臣だよオンちゃん!」
山「えっ、じゃあ、総理が俺を無罪に?」
塩「山辺音彦さん。あなたはジレッタという独自の表現活動をなさる、無形文化財だそうですね」
山「無形?」自分を指差して門前を見る山辺。いいから!とジェスチャーする門前*5
山「そのような方を刑務所送りにしたとあっては、日本の恥です!」
有「その通り!さ、君たち、総理にお礼を申し上げなさい」
三人「ありがとうございました」*6
塩「私は総理として当然のことをしたまでです」
有「いや!しかしここまでのことをしていただいて、何もしないというわけにはいかないだろう。なぁ山辺くん!」
山「あーじゃあ似顔絵でも描きましょうか」
似顔絵だと貴様!と怖い顔をする有木。
塩釜首相と官僚「ハッハッハッハッハ!」
塩「…失礼です!」
静かになる。
塩「似顔絵も素敵ですが…いかがでしょう、ここでそのジレッタとやらを、私に見せては頂けませんか?」
山「え、いや今ここで?」
門「いや首相、それは無理です。ジレッタをやるには特別な装置がないと…」
有「装置ならジレッタ館と同じものが、既にここにはあるんだよ」
門「!」
椅子が上手端に現れる。
有「さっこれをお耳に」塩釜にヘッドホンを渡す。
山「ほんとだ」
チ「偶然ねぇ」
門「…社長ですね?」*7
有「門前くん、首相をお待たせしてはいけないよ」
門「…かしこまりました」
投げやり気味に言って、装置に近づく。
おそらくこのあたりで後ろの壁が閉まる。首相と官僚、有木がいなくなる。
上手手前端で門前と山辺とチエが話す。
山「そんなにジレッタが見たきゃ、ジレッタ館まで来りゃいいのにな」
門「確かにこいつは何かあるな」
チ「何かって?」
門「ジレッタ鑑賞だけが目的じゃないってことさ」
山「で、奴らにはなにを見せるんだ?」
門「そりゃ政治家が喜ぶ出し物っつったら、アレだろ」

(ジレッタ前後のテーマ)*8

『邪道の嘘つき』
“バンザーイバンザーイバンザーイ”
当選の祝いの様子→国会の様子

上手から門前が現れる。ライトが当たる。ソロ。
“バレずにやるのがウソの醍醐味”
肩をすくめている。
“バレても平気でいられるならウソつきとして…邪道だよ”
笑みを浮かべ、選挙活動の一派が来るのを見て上手へ走り去る。

選挙活動の様子。
“利益!誘導!”

“そこで巨大なダルマ!ダルマ!”
巨大なダルマが下手から現れる。目が光って塩釜らが倒れこむ。ダルマが転がりながら上手へはけて、その間に元のセットに戻る。

(ジレッタ前後のテーマ)

門「!!(倒れ込んでいる塩釜らに気づき駆け寄る)大丈夫ですか首相!?…お前は一体何を見せたんだ!」
山「俺は元々政治家ってやつがあまり好きじゃないんだ」
チ「オンちゃん!あんたまた訴えられちゃうよ!」
塩「聞きしに勝るものでした…」
官「いやはや…」「今のが全部妄想だとは…」
門前が「座れよ💢」と小声で言って*9ジェスチャーし、1段目と2段目の間の階段に、門前、山辺、チエでぎゅっと並んで小さく座る*10
官「これが野党の手に渡ったら」
官「選挙に利用されてしまうな」
官「国民はすぐに騙されてしまうな」
有「てめーらは騙してねえのかっつー話ですが」
官「え?」
有「え?ハハハハハ」
官「ハハハハハ」
塩「有木さん、よくぞこの私に一番に伝えてくださいました。感謝しますよ。厚生大臣!」
官「はっ」一歩前に出る。
塩「全国の水洗トイレの普及を、有木さんの会社に」
官「便宜を図ります」礼。

官「これは一刻も早く、こちらに手懐けておくべきかと」
塩「確かに。門前さん、山辺さん」
門「!はい」
三人立ち上がる。
塩「素晴らしい体験をさせていただきました」
有「近い将来、このジレッタは日本を代表する文化となることでしょう」
門「私もそれを望んでやみません」悪い顔をする門前。
塩「門前さん」
門「はい」
塩「どうでしょう…全国に放送網を引いて、ジレッタの公共放送を始めてみては?」
門「!!」
山「公共放送!?」
チ「NHKみたいなもの?」
塩「国が全面的にバックアップしますよ」
有「我が日本天然肥料もな」
門「是非やらせてください…それこそ…それこそ俺が望んでいたことです!」


1年後
NDAの社長室。
下手側デスクに座る門前のもとへ、上手から現れた女性秘書がやってくる。
秘「社長」
門「ンなにかね」
秘「間リエという方がお見えになってます」
門「何!?あのリエかね」
秘「…どの。」
門「あのリエかね」
秘「……。どの。」
門「通したまえ」
秘書が上手へ引き返すと、先にリエが入ってくる。
リ「なんなの?そのしゃべり方は」
門「あのリエだ!」
リ「この、リエよ」

門「元気そうで安心したよ。一体何してたんだ」
リ「まぁ色々と」
門「こっちも色々あったよ。あ、こっちの情報は筒抜けか。なんせ始終マスコミが張り付いていたからな」
リ「ごめんなさい。このところ新聞もテレビも見ていなくて」
門「…とにかく…会いに来てくれて、嬉しいよ」立ち上がってリエの方へ回り、手を握る。「君は必ず俺に会いに来ると思っていたよ」
リ「お別れを言いに来たの。私、結婚するのよ」
え?となる門前。手を引きぬくリエ。
門「誰と!」
リ「あなたの知らない人」腕を組む。
門「何をしてる奴なんだ、そいつは」
リ「世界を飛び回るバイヤーよ。今夜彼とジュネーブに発つわ」
門「そいつは急だな…」門前、ソファに座る。
リ「じゃ、そういうことだから、さよなら」
門「…俺に止めてもらいに来たんだろ!」
俯きながら叫ぶ門前。
リ「は!?」←心底訳が分からなそう
門「プライドの高いお前が、その辺の男で満足できるはずがない」
下手側へ移動して、デスクに腰掛ける門前。
門「結局お前には、俺しかいないんだよ!」
リエ、鞄をソファに置く。

『ありふれた男』

“いつだってサプライズの仕掛けで頭がいっぱい”…
デスクに腰掛ける門前に近づく。
門“俺はそういう男さ”*11
リ“テレビ局を飛び出して”
門前、段差に腰掛ける。
門“置き土産の高視聴率”
リ“「門前プロ」を立ち上げ”
門“小百合チエをスターに”
リ“ジミー・アンドリュウスを呼び込んだ!”
リエ、心から褒め称えている様子の笑顔。
門“正気じゃないと笑われた”
リエが隣に腰掛け、二人目を合わせる。*12
二人“どれも全部”
リ“あなた一人で”
門“たった一人でやりとげた”
リエの顔が翳る。
リ“でも今は…”
立ち上がり、リエは後ろへ。しゃがんだまま目で追いながら門前“今でもそうさ”
リエ、上から門前を見下げ、軽蔑しきった声で“大金持ちに取り入って、政治家にまで媚売って…”
門“利用したんだ!”
一瞬曲が止まる。
“…されたのよ”

リ“どこにでもいるありふれた男”
我慢ならなくなった門前、床を右手で叩いて立ち上がる。
門“フラれた腹いせか?”
リ“こちらが本性?演じていたの?”
リエ、問うて下手一段上へ移動。
追う門前“そうなんだろう?”

上手4段目まで移動。
門“(君には俺が)必要なんだ!”

曲調がかわる。三拍子になる。
門“今の俺は偽りさ”
デスクに戻る。
門“君のためのサプライズ”
椅子を回転させる。
門“君には見破れないはずがない”
デスクに置いてあった新聞を手にして、折りたたんで下手へ投げる。
門“知ってるんだろう?本当の俺は…”
得意げな顔の門前。リエが上手奥へから一歩乗り出す。そんなリエを振り向いてから、目線を彷徨わせはじめる門前。
門“本当の…本当の俺は…”
見切りをつけたように出て行くリエ。*13上手奥へ駆け上がる門前。
門「リエ!戻ってきてくれ!」
曲終了。

再びNDAの窓背景が映る。
上手手前から山辺
山「何を騒いでんだ!?ちっとも集中できねえぞ!」
門「…政府が用意した試験放送の台本か」山辺が手にしている冊子を見ながら。
山「ああ、綺麗事ばっかりでちっとも面白くねえ(笑)」
門前、山辺から原稿を取る。破いて地面に捨て去る。
山「ああ!何すんだよ!」
門「こんなもん無視して好きにやれ」
山「いやそういうわけにもいかねえだろ」
門「山辺、お前は芸術家だろ!」山辺の肩を掴む。「公共放送だろうが関係ねえ、全力でふざけてやれ!」
山「そんなこと言ってお前、責任取れんのか!?」
門「取らない!」
山「取らないの!?」
門「放送が終わったら、面子を潰された政府の連中は血相を変えて俺たちを探しに来るだろうよ」下手へ歩き出す。「だがその頃にはもう海外に高飛びだ」にやっと笑っている。
山「高飛び?」
山辺を振り返る。「行き先は…(拗ねた子どもみたいな顔になって)…ジュネーブ!」*14
山「ジュネーブ!?どこだよそれ」
門「やるぞ俺は…これ以上ぬるま湯に浸かってたら風邪引いちまう。虚構の天才門前市郎、完全復活だ!」

暗くなり、山辺がはける。ソファとデスクにだけ光が当たっている。
ソファを腕だけで飛び越え*15、デスクを飛び越え、天板に腰掛ける。足を組んでぶらんとさせている。

全体が明るくなり、上手から有木と塩釜登場。
塩「いよいよですね」
門「ええ、さながら死刑執行前の気分ですよ」
塩「誰が貴方を死刑にするもんですか。放送が終わる頃には、あなたは英雄です!」
有「我が日天肥の社運もかかってるしな」
塩「…有木さん…あまり露骨に利権を求めてはいけませんよ」
有「これは失敬」
ふっと笑って「ではごゆっくり」と上手へ向かう門前。
有「なんだ、君は見ないのか?」
門「死刑執行前の気分にも、ふた通りあるでしょう。死刑される側と(自分の首を切るジェスチャー)、する側の」
笑いあう有木と門前。腑に落ちない表情の門前。
塩「どういう意味ですか?」
有「ずおっと、もう放送が始まってしまいます」
塩「ずおっと…?」*16
上手端のソファに、塩釜、有木で並んでヘッドフォンをつける。
背景のスクリーンにカウントダウンが表示される。

放送開始。
白いドレスのチエがセンターに現れる。
“自然豊かな日本列島〜真面目で質素な国民性”
白いタキシードの山辺が登場。
“強い財界”万歳する有木と有木に拍手する塩釜。
“頼れる政府”塩釜に手を差し出す有木。
“大好きな日本”
二人淑やかに下手にはける。

塩「素晴らしい!」拍手。
有「ここに来てようやく美女を出しましたな」
塩「どの角度からもお叱りを受けない、公共放送のあるべき姿です!」
有「味も素っ気もなくてたまりませんな」
塩釜ちょっと睨む。
有「いささかお堅い内容だが…初めのうちは仕方ない。テレビと同じです。徐々に緩めていけばいい」
塩「まずは国民の皆様の支持を得ることが重要です!」

遊女っぽい人々が上手奥から登場、液体窒素的なものがもくもくする。

塩「あの方達は?」
有「台本にはありませんが」

もくもくが晴れて遊女達が退くと、中心には不敵に笑う門前が立っていた。

塩「門前さん!?」
有「門前!?」

門“すべてまやかし”*17

門“アンビバレントなボクらの社会”
塩「国民の皆さんになんてことを!」
有「なんとも自虐的ですな」
塩「今すぐ試験放送を中止しなさい!さもなくば、衆議院解散しますよ!」
有「首相!ここは妄想の中です!ここでいくら叫んでも国民には届きませんよ!」
塩「そんな…声が届かないのは国民の方ばかりだと思っていたのに!」
この間、我関せずといった様子で、スッと立ってる門前。
山辺、チエも登場。
門“作り笑顔の世渡り上手 さらせジレッタで本性を”
チ“リアルの自分は守りつつ”
山“ジレッタの中ではアグレッシブ”

“むかつく奴は撲殺!銃殺!”
「ヒュウ!」と煽る門前。ジャケットプレイ。
山“我慢しないでジレッタの中では!”

リリリリ…という音とともに全員はけ、塩釜と有木と官僚、部下がわたわたしている。
部「社長!」
有「今すぐ奴らをつかまえろ!」
部「それが…」
有?“逃げた?”
塩?“山辺が?”
二人“門前も?”
二人“逃げた!山辺が!門前も!”
有“山辺!やり散らかして済むと思うか!”
塩&コ“山辺!やり散らかして済むと思うか!”

暗転、下手門前にライト。上手ジミーにライト。
門「ハロー、ジミー」
ジ「門前?」
門「頼みたいことがあるんだ。あんたの友人のバンドが今日本にいるよな。彼らが出国するとき、山辺って日本人を連れて行って欲しいんだ。…ただし、誰にも気づかれずにな」
ジ「亡命ってことか」
門「(食い気味に)嫌とは言わせないぜ!あんた俺にでかい借りがあるんだ!」

塩釜、有木が上手から走ってくる。
有「門前!」
塩「門前!」
門「何か問題でも?妄想でも、言ってることは真実ですよ。」

ラスサビ。
門“全てまやかし”*18
門前が部下と官僚に挟まれセンターで歌っている。
“顔で泣いて背中で笑う”
部下と官僚を押しのけ、下手側隣塩釜と官僚、上手側隣有木と部下で横並びに踊る。

曲終了。

*1:ここで裁判官が手を滑らせて木槌投げちゃったというおもしろハプニングが発生した。裁判官が「…」と拾いに行った。しばらく木槌を奪われたりして水面下で弄られていた。by5/19公演の人

*2:どちゃくそかわいい

*3:ここどうしても立たへんに聞こえるので立たへんにしてみました

*4:ここで出てきた人の胸がやたらでかいので花瑛さん演じる女の子が自分の胸に手を当てて「!?」ってなっててかわゆす

*5:かわいい

*6:素直に応じる門前かわいいけど、権力に媚び売るのが普通になってきた門前が出てるなと思った

*7:ここで、普通に有木を目で追うのではなく、外回りして背中を向け気味ににらむのがすごくよかった

*8:ド#↓ド#↑シド#↑、シラ#シ、ラ#ソ#ラ#、ソ#ミファ

*9:他の公演は分からないけど千秋楽では門前が山辺をビンタして山「えっ」ってなってた。

*10:千秋楽本当にダメだった。しょこたんとハマケンさんがゆさゆさ揺れて何かブツブツ言ってて、イライラ顔してなきゃいけない横山さんをめっちゃ笑かそうとしてた。横山さん笑いかけながら必死に笑いを抑えてた。無理無理絶対保護彼等友情永久不滅

*11:鼻を指でこすって分かりやすくはにかんでてかわゆすだった

*12:リエの顔本当に愛おしそうでウアアアアって感じだった

*13:これも他の公演分からないけど千秋楽ではリエがすっごい悲しそうな泣きそうな顔で出て行くからたまらんかった

*14:ちょーーーかわいい

*15:もはや倒立

*16:「ずおっと?」とか「ずおっとってなんですか」とか言う。最初は普通におっとって言ってたはずなのでどっかで噛んだのを定番化したのかも

*17:ここがもう本当に…強弱のついた表情豊かな歌声、すべてをぶち壊す迫力、最高にかっこいいとしか言いようのないやつ

*18:さっき史上最高とか書いといて本当の史上最高はこっちだったというオチをつけたい、意味わからんぐらい素晴らしい迫力、無理、思い出し無理

上を下へのジレッタ④

二部開幕。
“ジレッタ ジレッタ!”
“お邪魔します、お邪魔します”
奥の方の下手と上手からコーラスが一列になって登場、交差しながら前へ。
“聴診器はもういらない”
上手から行進の足取りで門前登場。*1
下手から山辺登場。
…“山辺音彦ワールドに!”

“見てるけ?母ちゃん!見たか!お父ちゃん!”*2
歌いながら下手からキミ子。

有木登場。
“長蛇の列”…

4人“月の石が霞んで見える”

“実物はどれも知らないけれど”
門“そこがポイントさっ”*3

コーラス“ただ1点…ただ1点…”
一列横に並んだコーラス、うんざり顔で両端からキミ子の顔の紙を配る。
“どれもみんな同じ顔”
一斉にキミ子の顔になる。
山“それの何がいけねえんだ!”
キ“オンちゃん…”

“よりによって よりによって なぜこんな…”
“なぜこんな ブ”
門「それ以上は言わないでやってくれ!」
山「よし分かった、ジレッタの内容を地獄めぐりに変更だ!」
有「君!批判は真摯に受け止めたまえ!」
キ「私なら平気だから!」
有「本音を言えば私も彼らに賛成だがねぇ」

“ジレッタ!ジレッタ!”
帰って行く人々。曲終了。

「ありがとうございました」と口々に言い、頭を下げて見送る四人。

有「門前くん〜、大成功じゃないか!」
門「社長のおかげですよぉ!」
有「いやいや、これも全て、ミスタージレッタこと、やま…やま…やまちかくんのおかげだよ!」*4
山「山辺だよ!誰だよやまちかって」
山辺立ち上がる。
山「そろそろ世界の名所巡りにも飽きちまいましたよ。ここらで一発、エロい妄想でも入れていいですかねぇ」
有「エロい妄想!いいねぇ」
キミ子立ち上がる。
キ「子どももいっぱい観に来てるんだから駄目よ!」
門前近づく。
門「どうせエロくならないよ。出てくる女は皆このツラなんだから」つんっとする。
山「いけねえってのか!?」
有「まぁまぁ山辺くん。*5午後に備えてゆっくり休みたまえ」
門「社長!お疲れ様でした!」*6

下手からリエ登場。
門「リエ!来てくれたのか」
リ「ええ、結構な盛況ぶりね」
門「おかげさまで世界中のマスコミから取材が殺到してるよ」
門前、リエより下手側に移動し、明らかに得意げな表情。
門「今ならお前も仲間に加えてやってもいいぞぉ」
リエ、門前を見て
リ「…しばらく見ない間に、ずいぶん平凡な顔になったものね。まるで別人よ」
門「別人?小百合チエじゃあるまいし(笑)」
リ「それともこっちがあなたの本性かしら?今度どこかですれ違った時、気づけるといいんだけど」
リエ、言い捨てて下手側へ去っていく。
門「どういう意味だ?おい、リエ!」
険しい顔の門前。
大トロの話で盛り上がっているキミ子と山辺の前を通り過ぎながら「チエ、こっちに」と上手へ移動。
キ「はい」
山「おい、人の彼女を気安く呼びつけるなよ!」
キ「いいから!」

門「土曜日に部屋に行くよ。それまでにコンディションを整えておけ」キミ子のほっぺをくすぐる。
キ「また断食しろって言うんですか!?」
門「忘れたのか!?」肩を抱く(覆う?)。「お前はジミーの一件で我が門前プロに大損害を与えたんだ!」
キミ子が頷くと、やらしい感じの手つきで肩を2回叩く。「それでいい」と笑って上手へはける。

俯くキミ子。山辺が駆け寄る。
山「またあいつに虐められたのか!?」
キ「オンちゃん…私待つよ!あんたがうんと偉くなって、誰も頭が上がらないくらい(門前の方をちらりと見る)、偉くなるまで待つから!」
山「キミちゃん、何だよ急に」
キ「今のオンちゃんの勢いは凄いもん!この勢いを、式場選びだの、披露宴会場選びだの、引き出物選びだので止めちゃいけないよ!」
山「キミちゃん、俺のためにそんな…なんて可愛い人なんだ!」(抱きつく)
キ「頸動脈っ!」
山「!ごめんキミちゃん…」
キ「ううん、オンちゃんがこれほどの腕力を取り戻してくれて嬉しいよ!」
山「君の言う通りなのかもしれない…ここは芸術家として踏ん張りどころなのかもしれない!」
キ「さ、それが分かったら私のことは気にせず行って!午後からはヨーロッパのお城巡りでしょ?」
山「ああ、ヨーロッパのガイドブック、穴があくほど読み込んでやるよ!!」*7
キ「がんばってねー!」手を振る。山辺の姿が見えなくなると、暗い顔で俯く。

座席のセットが上にはける。竹中郁子と秘書がパラソルのあるテラス席に座っている。3段目。
竹「あら?そこにいるのは、春海渚じゃあないの?」
キ「竹中社長!…と、秘書のなんとかさん!」
駆け寄ってた秘書がズコッとなる。
秘「君も話題のジレッタとやらを観に?」
キ「いや、関係者があそこに…」
竹「隠さなくたっていいのよ。ジレッタの創始者山辺さんは、あなたのフィアンセなんでしょう?」
キ「どうしてそれを?」
竹「それを知って、駆けつけてきたってわけ」
竹中郁子、キミ子に近づき、「あんっ」と声を発しながらスカーフを取る。さらに「あんあんっ」とスカーフを回し、投げる。
キミ子の手首を掴む。
竹「許してちょうだい渚。あなたを手放したことは、この竹中郁子」
帽子を取り、「えいっ!(力強い)」と地面に投げつける。もう一度腕を掴み、仰け反る。
竹「一生の不覚だったぁ!」
キ「…どういうことですか?」
下手側から上手側へ移動しながら秘書、
秘「君の歌唱力を妬んだ他のタレントが流したあらぬ噂に、我々はまんまと騙されたってわけさ!」
キ「仮面を取ったから*8、クビになったんじゃないんですか?」
竹「まさか!しかるべき時がきたらちゃあんとあなたのその美、あれ?美、おや?びぼ、えーっと。びぼ…」
秘「I・KU・KO!(小声)」
竹「おう。美貌を!ファンの皆様にお披露目するつもりだったのよ」
キ「そうだったんですか!?♡」照れるキミ子。
竹「お願い渚。もう一度力を貸してちょうだい」
キ「あ、でも、私もう別の事務所に所属していて…れ
竹「戻ってきてくれたら待遇も見直すわ。そうね…ギャラの配分も7:3にしてあげる」
キ「ええっ!?さ、さ、三割も私にくださるんですかーっ!?」
さんの指を突き出して飛び上がるキミ子。
秘「君にはそれだけの価値があるってことさ!」
キ「わ、私、社長に掛け合ってきます!」
竹「いい返事待ってるわよー」
キ「よろしくお願いしまっす!」
おじぎをして上手へ走り去るキミ子。上手側にたっている秘書、その方向を見ながら「将射んと欲すれば(社長を振り返り)まず、馬(上手を指す)を射よ」
竹「ジレッタさえ手に入れてしまえば、あんな娘に用はないわ」
タバコを差し出し火を差し出す秘書。
竹「それまでせいぜい、大切に扱っておやり」
煙を吐き出し*9、下手へはけていく。
上手手前から門前と山辺(下手を睨んでいる)登場。
竹「聞いたか山辺。あれが竹中プロの竹中郁子だ」
山「くそー、キミちゃんを弄びやがって!許せねえ!」
殴りかかるように一段登って走り出そうとする山辺の身体を、うまいこと自分の下手側の隣にくるんと流す門前。山「!?」←何が起こったか分かっていない*10
門「制裁を加えたいならいい方法がある。この国の芸能界じゃ、大勢のか弱い女の子たちが奴隷のようにこき使われてんだ!」*11
山「許せねえ〜!」
門「ああそれだ、山辺、怒りのジレッタを見せてやれ!」
門前、山辺の肩を抱きながらはけていく。

山辺竹中郁子、門前、秘書がジレッタ館のセットに。

竹「私のために、ジレッタ館を貸切に?」
門「ショービジネスのプロである竹中社長に、一般客と同じ子どもだましを見せるわけにはいきませんから」
秘「自信家の君らしくないな。何か裏があるんじゃないのか?」
門「まぁ…正直なところ、馬鹿にされたくなかったんですよね。とっておきの特製ジレッタを見て欲しかったんです」
秘書と門前が話してる間、ものすごく睨んでくる山辺に困惑している竹中郁子。
竹「あのー…さっきから彼は何故私を睨んでるの?」
焦った顔で駆け寄る門前。
門「し、集中…してるんだよな!」*12
山辺、一段下がって社長の前を横切りながら、「どうぞ、ご堪能しやがれ」と上手へはけていく。*13
門前、二人にヘッドフォンを渡す。
竹「ヘッドフォン?ジレッタって、見るものなんじゃないの?」
門「見るっていうより、味わうんです(1段目に降りる)。全身でねぇ…」上手へはけていく。

ヘッドフォンをつける二人。
竹「なーんにも聞こえない。これ、壊れてるんじゃなぁい?」*14
ヘッドフォンを外す二人。ジレッタ館の客席の絵が描かれた壁がなくなると、そこにはキメポーズで固まっているアイドル。センターにチエ。
竹「!?なんなの、あのこっぱずかしい娘たちは!?」*15
秘「あれはみんな我が社をクビになったアイドルたちです!」
竹「クビになって当然ね!」

『アイドルの逆襲』*16

“生き恥!”
竹「何よあんたたち、復讐しようってんなら御門違いよ!あんたたちが売れなかったのはねぇ、才能が無かったからなのよ!」
秘「社長!挑発はおやめください…!」

“Sing! Sing! Sing! Dance! Dance!”
竹「嫌よ!」
“歌って”*17

“ガラガラだけどSmile for you. ガラガラだけど!!”*18

竹“ああわが子以上に愛を注いできたつもり”
秘「社長!?」
笑顔だったアイドルたち、急にしらける。

ヘイユー!と竹中が振ると秘書が歌い出す。
秘“この瞬間 今 君は輝いているか 大事なのはそれだけ”
チ“よく言うわ!”

“歌えないなら干しちゃおう”
長い洗濯ロープに2人の腕を引っ掛ける。

首輪を持ってきて、2人の首に取り付ける。
“飼い殺し!飼い殺し!”

竹「いい加減におし!」首輪を投げ捨てる。
竹“平凡な なんの取り柄もない娘たち”…
再び白けるアイドルたち。
チ“まるで反省が見られない”

“謝罪会見始めるよ”
会見台が出てくる。意気消沈している2人。

首を吊るためのロープが2人の頭上に降りてくる。
“Cry Cry Cry Cry Cry…Good bye!”
手を振って左右にはけるアイドルたち。
二人がロープに手を伸ばしたところでジレッタ終了。

*1:ここだけやけにお遊戯会みたいですごくかわいい。二部最初のここの歌声掠れがち。愛しかった

*2:ジレッタ!ジレッタ!のリズムで

*3:人差し指あげて得意げでスネ夫みたいでかわいい

*4:5/7はたしかやまのべ

*5:門前と山辺が言い合いっぽくなって有木が「喧嘩はやめろ」って言った

*6:このあとは完全に竹中さんと横山さんのアドリブに任されているのか、同じパターンがほぼなかった模様。「…社長!」「(振り向く)」お疲れ様でした!」「エロい妄想、いいねぇ!」/ 「社長!」「(振り向く)」「ご機嫌ですねぇ!笑」「エヘッヘッヘッヘッロい妄想、いいねぇ〜〜!!」「(はけた方向を見ながら)…すげぇなぁー…(笑)」客「www」など。←このパターンの時、そこにいたのは門前ではなく横山裕くんだった、とてもよかった。千秋楽では「呼んだ?」と有木が振り返り、門「ww呼んではないですね(笑)」

*7:ヨーロッパのガイドブック(パンッ)穴があくほど(パンッ)読み込んでやるよ!という感じで、エアーガイドブックの紙面をめっちゃ右手の甲でパンパンやってた

*8:ジェスチャーかわいい

*9:実際には出てないけど

*10:面白い

*11:自分もこき使ってるくせにいかにも悲痛そうに嘆く門前最高に好き。

*12:声の上ずり方がとてもよかった

*13:睨んでると思ってたけど、はじめて上手から見た千秋楽ではとても無理矢理な笑顔だったので毎回そうだったのかもしれない。

*14:25日までは門前に言ってるっぽかった。30日には秘書に言ってる感じに変わってた

*15:千秋楽では「うんたらかんたらこまっしゃくれた娘たちは!?」だったような

*16:ジレッタ内いちばん怖い歌だった。大好き

*17:ずいっと迫る感じがとてもこわい

*18:ガラガラだけどぉーーー!?!?みたいなクレッシェンドがめっちゃこわい

上を下へのジレッタ③

舞台両端に「リエの部屋」の文字。
門前がガクンとソファに座る。

リ「そろそろ来る頃だと思ったわ」
門「お前も俺を笑ってんだろ」
リ「私を他の連中と一緒にしないで」
門「俺の周りにはもう誰もいない…」
リエ、立ち上がって門前の座るソファの後ろへ。背もたれに手をつく。
リ「あなたはねえ、トカゲみたいに、切り落とされてもすぐにまた前よりも立派な尻尾が生えてくるの」腕を組みながら、「この部屋は、それまでの巣みたいなものよ」
門「…さすがに…分かってるな」
無理やりな笑みを浮かべる門前。立ち上がる。
門「この程度の挫折じゃ、かすり傷にもならねえんだよ」
目があう二人。キスをしかけた時、電話が鳴る。
無言でリエを電話側へ押しのけて、背を向ける門前。
不満げな顔で電話に出るリエ。
リ「はい。ええいますけど。あなたによ。大学病院から」
門「病院…?」
門前、電話に出る。リエ上手側で様子を伺う。
門「はい、門前です。え!?あああすぐ行きますから!」
電話を切り、ソファにかかっていた上着を取りに行こうとする門前。
リ「これ以上まだ何か?…待って!」
リエ、先に上着を取る。
リ「置いてくつもり?たった1人の味方を」
門「お前も付いてきてくれ」
上着を渡す。走る門前を追う。
リ「行き先は?」
門「ビルの工事現場だ」
リ「工事現場?」
上手へはける。

医「病院で急激に容態が悪化しましてな。試しにここに戻してみたところ、安定したというわけなんです」
医「しかしそもそもなぜ3ヶ月もの間、この男が飲まず食わずで生き延びることができたのか。それもこの場所に秘密がありそうなのです。」
医「何かあるとすればこの鉄柱です。この場所でのみ、容態が安定するからです」
柱の奥側にリエと門前。
門前柱の陰から一歩踏み出して、
門「そんなことより、どうして俺をここに?…こんな男に見覚えは」
誤魔化すようにうすら笑いを浮かべる。
医「それはこの男の妄想に、決まってあなたが出てくるからなのです」
リ「ちょっと待って」
割り込むリエ。
リ「この人がどんな妄想をしてるかなんて、本人以外に分かるわけないでしょ?」
医「それが分かるんです」
医「この聴診器を使えば」
門「聴診器ぃ?」
医「さっこれをこの男の胸に当ててみてください」
医「騙されたと思って!」
医「決して損はさせませんから♪」
リ「なんだかすごくいかがわしいわ」
医「頭を空っぽにして。余計なことを考えると、ジレッタの世界に反映されてしまいますからな」
門「ジレッタぁ?」
リ「なんだか、お医者さんごっこみたいだわ」

大きな俵が上手から下手、下手から上手へ転がる。それにあわせて聴診器が回収されたり山辺が回収されたり。

舞台中央で身を寄せ合う二人。
門「なんだここは…!?」
リ「み、見て!」
門「馬!?」
馬に乗ったカウボーイなコーラスが登場。
“ヒーハー!”

“ここはテキサス”…
コーラスの動きに合わせて踊らされるリエと門前。
“西部劇 ヒーハー!”

門「やめろォ!俺の女に何する気だ!」
コーラス「お医者さんごっこだ!」
“注射 注射 注射”
門前は上手側に追いやられ、下手の方でリエが注射されたり問診されたりしている。
リ「キャー!」
“問診 問診 問診”
門前助けようとするがコーラスにはねつけられる。
“点滴 お薬 レントゲン”
“こりゃもうダメだ!オペの準備を!”
門「オペ?オペ…」←口の動きだけ
手袋(エアー)をはめる門前。
“前代未聞の大手術”
リエの腹にメス(エアー)を入れる。
“ヒーハー!”
二人とも突き飛ばされる。

曲調が変わる。
下手から馬に乗ったキミ子と山辺(保安官)登場。Uターンして馬が上手側に。
山“俺は保安官”…

馬から降りた山辺、上手手前に立つ門前に拳銃を投げる。*1
門「どういう意味だ」
山「とれ!門前!」
キ「男なら拳銃をとりな!」
リ「やめて!」門前に。
門「いいさ!こいつとはいずれ決着をつけないとと思ってたんだ」
拳銃を拾い上げる。
門前、山辺と目を合わせながら下手へゆっくりと移動する。
次の瞬間、馬に撃たれる。*2
門「いいい!?」
リ「撃った…馬が…」
山「勝った!」
リ「撃った!馬が!」
はっはっはっは〜と笑いながら山辺たちがはけていく。
リエ、倒れた門前にすがりながら「酷いわ!」「馬なんかに…!」「馬なんかにいいい!」*3

俵が転がる。俵に隠れて小道具が回収されたり山辺が戻ったり、リエと門前が聴診器をあてる体勢に戻ったりして現実世界の風景に。リエはまだ泣いている。門前は苦しんでいる。
医者に聴診器を取られる。我にかえる2人。
門「今のは…?」
医「お分かりいただけましたか?」
門「さっぱり分からない!!」立ち上がって叫ぶ門前。
医「調べてみたところ、この柱は東京中の騒音の中からある種の超音波を吸収し発しているようなのです。その超音波に脳を刺激され、とんでもない妄想を生んでいるのではないか」
医「その妄想世界に入り浸ることで彼は仮死状態に陥り、3ヶ月もの間生き延びることができたというわけなんです」
リ「信じられないわ」
門「どうしてそれを俺たちも見ることができるんだ?」
医「それはこの男の精神波が強いからでしょう」
医「我々はこれをジレッタと呼んでいます。あちらの世界で、彼がそう説明するからです」
医×3「ここは、ジレッタだ。と」
医者三人、客席に体を向け三人くっついたままぎこちなく*4下手へとはけようとする。(山辺を後ろに隠してはけようとしている)

4段目、スクリーンに映る噴水の前のベンチに、門前、リエの並びで座る。
門「お前なら分かるな。俺が今なにを考えているか」
リ「ジレッタね」
門「その通り。今度の仕事は芸能界なんかとはスケールが違う」
リ「でもこんなもの使って何を?」
門「今度こそ世間をあっと言わせてやるんだ!」

『野望と現実のはざまで…』

門“世界中でテレビを見てない人間は?”
リ「いないわ」
門“今にテレビは空気になるよ”…
リ「それで?」
立ち上がる門前。一段下へ降りる。
門“マスメディアの王座は空席”

リ“世界中がジレッタを?聴診器が足りないわ”
門前、リエを振り向く。リエ立ち上がる。
門“どうにかするさ”
リ“どうやって?”
門“そいつは”
門前、リエに背を向ける。
門“あとで考える”
リエずっこける。
リ“そこが一番重要よ”

門“必要なのはパートナー”
リエに手を伸ばしひざまずく。
門“闇の中光を灯してくれた君”
リ“条件があるの 簡単な条件よ”
微笑みながら手を握る。
リ“小百合チエと別れて”
手に力を込めて門前痛がる。
門前、上手側を向いてリエに背を向ける。
門“ジレッタこそ本物のマジック”…
リエ、門前に向かって
リ“知ってるんだから あなたが彼女を囲ってるって”
門“ジレッタは体験するメディア”
再びリエより一段下がる。
リエ、門前に背を向けたまま、
リ“水木金と飢えさせて”
人差し指で水木金を数える。門前を振り返って“抱きに行くのよ”自分を抱くような振り。
門前、さらに下手へと移動して
門“おお!ジレッタそれはまるで…”
リ“ごまかさないで!”
リエが門前に人差し指を突きつけて曲終了。

門「つまり…何か?君ほどの女が、あの田舎娘に妬いてるっていうのか?」
リ「…認めるわ。あの小百合チエのほうの顔に、たまらないほど妬いているの。とにかく、あの女と手を切らない限り、私はあなたと組む気はないわ」
門「…分かった」
リ「言ったわね?」笑うリエ。
門「きっちり別れてやるから、お前は…俺の…そばにいろ…」
リ「…今夜は楽しかったわ。またね」
リエ、上手へはける。門前下手に残されると。
門「…勝ち誇ったようなツラしやがって。悪いがこっちは女の嫉妬に付き合ってる暇はない。まずは資金集めだ…使いきれないほどの金と、えげつない功名心を持ったスポンサーを探すんだ!」

『Mr. Yesman』
有木社長、一回席主通路下手側から登場。
門前、上手側壁にもたれてニヤニヤする。

“わたしは歴史に名を残したい〜!!”
門「ちょうどいいのが現れた」
門前中央に立つ。
門“殺し文句は『先駆者』(右手)『草分け』(左手)『パイオニア』(両手)”
下手にはける。

コーラスがはけて、曲終了。
山辺に聴診器をあててうなだれている有木。門前が聴診器を取る。
門「いかがでしたか社長」
有「なんかすっごいテンション上がっちゃったぁ…」
門「これが、ジレッタです」
有「は...!あの感じのいい奴らがいた世界がか!」
有木立ち上がる。
門「お気に召していただけましたか?」
有「門前くん!これは大当たりするぞ!」
門「社長にお力添え頂ければ、社長がジレッタ界のパイオニアということに!」
有「わたしがパイオニア....!?よし!やろう!」
門「社長〜!」
有「門前くん!わたしを男にしてくれ〜!!」
門「それはこちらのセリフですよ社長〜〜〜!!」
有木に股間を押し当てられる門前*5

チエ、下手奥から登場。
チ「オンちゃん!?」
門「チエ!?なんでここに!」
チ「オンちゃん〜〜!」
山辺に駆け寄ろうとするチエ。
門「死ぬぞー!!」
チ「死ぬ〜〜!?」
門「下手に動かしたら死ぬ。奴は今生死の境をさまよってんだ!」
チ「どうして〜〜!」
有「…!?おい門前くん!ジレッタの大元は死にかけているのか?そんな将来性のかけらもない事業に協力はできんぞ!」
しまった!という顔で有木に駆け寄る門前。
門「違うんですこれはあのなんて言いましょうか」
チ「事業!?どういうことだよこのオヤジ〜!」
有「オヤジ〜〜!?*6門前くん!!」
門「はい!!」
有「今すぐこの美女を紹介したまえ〜☺️」
門「それはまた今度しますから!!」
社長とチエを引き離す。
門「…リエか。この場所をお前に教えたのはあの女だな!」
チ「どうしてオンちゃんがこんなことに…!」
門「それは…、じ…事故にあったらしい」
チ「事故〜〜!?」
門「でも悲しむのはまだ早い!彼はいつでも君のことを想っているんだよ!」
チ「どうしてそんなことが先生に!」
門「これを彼の胸に当ててごらん」
聴診器を手渡す。
チ「先生…いくらわたしがバカだからって。こんなものでオンちゃんの心が分からないことくらい!」
有「言われた通りになさ〜い」
柱の陰からだらしない顔の有木。
有「あとでわたしが、ワイハ〜に連れて行ってあ・げ・る・か・ら♡」
チ「知らないオヤジとハワイなんて行きたかないわよ!」
門「いいからはやくやれ!」
チ「命令ばっかり…!ワンマン社長のもとのタレントは惨めだわ」
チエ、聴診器を山辺にあてる。

チエの顔の前に手をかざし、反応がないことを確かめて汗を拭う門前。
門「ジレッタに入ったようです」
有「何者なんだねこの美女は」
有木、ジレッタに入っているチエの顔をしゃがんで覗き込む。
門「ああ…自分のことを山辺のフィアンセだと思いこんでいる頭のおかしい女です」
有「なに!?この汚い男がフィアンセだと〜!?*7羨ましい男だな〜!!」
山辺の鼻をつまむ。唾を噴く山辺。うわきたねっ!となる有木。
門「実際はそうでもないですよ」
有「何?どういう意味だ」
門「あっ…いや、そんなことより社長。来たる万博で、社長の会社日天肥はパビリオンを出店するだとか」
有「さよう!我が日本天然肥料は、世界中のトイレが一同に会する、トイレ館を建設するのだ〜!」
門「いやトイレ館って(笑)」
噴き出したところを有木に見られ、慌てる門前。
門「あっ、あー…トイレ館も魅力的ですが…それよりどうです?ジレッタで勝負してみるというのは!」
有「ジレッタ館か!」

チエの聴診器を外す。
チ「あれ…!?わたし…」
門「俺の言っていたことは嘘じゃなかっただろ」*8
チ「不思議な場所で、オンちゃんが私に言ってくれたんです。俺が愛してるのは君だけだ、腹いっぱい食べればいいって!」
門「おいほんとにそんなこと言ったのか」
じたばたしながら有木「決めた!トイレ館は撤回!ジレッタ館を建設する!」
門「社長!!」
チ「ジレッタって何なんですか?オンちゃんもさっき同じこと…」
門「おいチエ!お前の彼氏はものすごい才能の持ち主だったぞ!こいつは、いや彼は、これから大成功を収めるんだ!」

『ハロー、ジレッタ』

舞台の中心で門前。
「ハロー、ジレッタ!港区地下生まれの虚構の神」
「ハロー、ジレッタ!現実を覆う虚構のカーテン」
“今なら分かるあれもこれも”…

倒れていた山辺が起き上がる。
“行くな ジレッタ ごちゃまぜになったボツのアイデア
え?え?となる有木とチエを押しとどめ、門前、山辺を下手に突き飛ばす。
“ひとり占めはよくねえな”

全員“世界中が狂喜乱舞 大喝采 ジレッタ”
山辺、後ろから登場。
山“どこにも行くな”
山辺、コーラスに持ち上げられて上手へはけさへられる。
“世界が俺たちの前に跪く”テンポを緩めながら。
門前ソロ。
“世界を手玉に…ジレッタ!”*9
金色の紙が降る。

曲終了。拍手の中暗転。
一部閉幕、休憩時間。

*1:拳銃を飛ばしすぎて客席に落ちるハプニング発生。「…取れよ」と言われ門前が客席に降りた。by5月某日公演の人

*2:馬役の人が冷めた顔で拳銃を向けていた

*3:回を増すごとに「馬なんかにい!」の強調度が上がって面白かったけど、千秋楽では普通レベルに戻っていた。

*4:こちなさはわざと

*5:尻を揉まれたりすることもあった。千秋楽では「こい!」「いいんですか!」下からハグ、股間をあてられ「おっきいですね(笑)」

*6:千秋楽では、ずんずん近寄る有木に門前が「オヤジはだめですね…」ってなだめてた。

*7:他の公演は覚えてないけど、千秋楽では「くせっ!」と鼻をつまんでいた。

*8:この間ジャケット広げてぐるぐる回りつづける有木。この有木は竹中直人さんの気まぐれで出現する模様

*9:ジーーーーレッッターーーーーって腹の底から音伸ばしててすっごい素晴らしくてすごかったすごく歌がうまかった。あと顔はとてもきりっとしていた。かっこよくて泣いた。

上を下へのジレッタ②

ひらひらの幕の隙間から女の人の生足が出てくる。
ジミー、顔だけ出してキョロキョロしてから、バックダンサーの女性を従えて登場。
“My ladies…”
下手で門前とチエが立っている。ここから?門前は黒のハイネック。
門「見てみろ、チエ。あのジミーアンドリュウスがお前に会いに遥々日本へやって来たぞ」
チ「ええ?あのなんだか薄っぺらい外人が!?」胡散臭そう(汚らわしそう)な顔。
チエはしばらく立っているが、そのうち門前の隣に腰掛ける。その間もすごく嫌そうな表情。

マネージャー「おい!ジミー!テープと口がズレてるぞ!」
ジ「シッ!」

“You're just a Fake star!”
(ここからジミーが口パクだということを歌で観客に説明する)*1
徐々にチエが好感を持つような表情になる。

“そうよ Fake star!”
チエが立ち上がり、ジミーに近づく。
二人で歌い始める。
その様子を見ておっ?となる門前、立ち上がる。ソファがちょっと中央に移動。門前、上手寄りに座り直す。
二人が歌っている間に、マネージャーと門前が言葉を交わす。
マ「Nice to meet you. ジミーのマネージャーです」
握手を求めるマネージャー、応じる門前。
門「門前です。御覧なさい。すっかり心を通わせたようですよ」

“You're just a Fake star…”
「Fake star」部分で突然ジミーの声がおかしくなる。
4人「!?」
マ「機材トラブルだ!」
門「機材?」
マネージャーが門前に「いやいや、ちょっと待って!」的なジェスチャーをして、ジミーを連れてソファーへ移動。

チ「どうしたのかしら?」
門「そんなことよりチエ、なんだその陰気な顔は」
チ「そりゃだってオンちゃんが...!」
門「あいつのことはもう忘れろ」
門前、チエに背を向ける。
下手側から「ルームサービスでーす」の声。
ダッシュではけるチエ。
門「ホステスの女と駆け落ちなんて、薄情な男じゃねえか。そんなことより今はジミーだ!国際的スターの彼に気に…」
門前が下手を振り向くと既にチエはいない。
門「!!お前っ、食うなーーーーー!!!!」
門前も下手へはける。

ジ「チエはどこに行った!」
マ「喋るな!」
ジ「まだ直らないのか!?!?!?」
マ「直るまで口を開くな!」

下手から門前とチエ(キミ子)。
門「またその顔か!」
キ「すみませぇん…」
門「走れ!ホテル中走って腹を空かせてこい!」

“Oh Oh Oh Fake star!”

しっとりと曲が終わる。暗転。


工事現場の穴の下のセットに。中央の柱のそばで横たわるもさもさの山辺
ナレ「一方その頃山辺音彦はどうなったのか。工事現場の穴へ落ちてから60日が経った今…彼は、生きていた!」
山辺、むくっと起き上がる。
山「今日こそここを抜け出してやる…!こんなところで死んでたまるk…」
中央の柱を上手側に通り過ぎたとき、「おや?」と振り返る。
山「こんなところにボタンが。ご用の方はこのボタンを押してください?*2ハハ!あるよご用!」

ピンポーン
山「オーイ…」
奥のスクリーンに階段が現れる。
山「うあああああ!こ、これが出口なのか?誰か降りて来る!」
上から綺麗な山辺が降りて来る。
山「あれは…俺だ!」
山2「そうだ、俺だ」
山「ここに俺がいるってのに、どうしてもう一人俺が!?おい俺、納得のいく説明を…」
言ってる間、やたら左右にうろうろする綺麗な山辺
山「おい、おい、落ち着け!俺!」
山2「いやなんか柱が邪魔で....」
山「柱?じゃあどかしてもらうよ。お願いしまーす」
柱が上へあがって消える。
山2「いいのか!?この建物を支える大事な柱だろ!?」
山「話をそらすな俺!ここは一体どこなんだ!?」
山2「ここは…ジレッタさ!」
山「ジレッタ...!?」
山2「説明をしている暇はない!カウントダウンはもう、始まっているんだ!」
気をつけをした山辺の上げた右手の上方に数字の5が登場する。
6、7
山「いや数増えちゃってるじゃねえかよ!」
山2「もうだめだあ〜!」
山「え!?おい!いくつになったらダメなんだ!」
山2「分からない!うわあ〜!」
16、17
ドカーン!スクリーン上の山辺が爆死する。
バックダンサー登場。

山「ジレッタの説明については、爆死した俺に変わって生き残った俺が」

帽子髪の毛ヒゲ服を取り去ると昭和のロックスターのような服でキメた山辺になる。
『ジレッタ1』

“ジレッタ!”(最後の)
でっでっでっでっでん!
決めポーズで座る。バックダンサーに持ち上げてもらう。

いえーーーい!ひゅうー!と盛り上がっている間にキミ子が上手に登場し、山辺を睨みつけている。
山「キミちゃん!?どうしてここに!」
キ「先生が良心の呵責に耐えかねて教えてくれたのよ!」山辺に近づく。
山「門前が!?信じられねえな」
キ「でもその必要はなかったみたい。あたしはあんたのハーレムに加わる気はないわ!」
ダンサーたちがしらける*3
山「誤解なんだキミちゃん!この人たちはさすがに俺のソロじゃ寂しかろうと好意で集まってくれたんだ!」
キ「さようなら!」段を上がり4段目へ。
山「待ってくれキミちゃん!知ってるだろ!?俺には君だけなんだ!」キミ子の腕を掴む。
キ「悔しい…!嫉妬の炎で私、今にも燃えそうよ〜!」
山「嫉妬だなんてそんな…、!?キミちゃん!?君本当に熱いぞ!」
キ「炎上しそう〜!!」
山「キミちゃん!煙が出てるよ!どうにかした方がいいって!キミちゃん!」

爆発。
“たまに火だるま!そして水中!”…

“快適!”
キメポーズ。

拳銃の音。
山「誰だ!?俺を狙撃しやがったのは!」
ライフルを抱えた門前が下手から登場。
山「門前!」
門前、すぐにはける。
山「逃げるのか!」
ニセ門前、反対側から後ろ姿で登場。
門「はっはっは!俺ならここだー!」
山「瞬間移動!?お前いつの間にそんな技を」
はける。反対側から後姿で登場。*4
門「はっはっは!俺ならここだー!」
山「意図が見えない!」
はける。反対側から登場。
門「はっはっはー!俺ならここだ」
偽物と一緒に本物の門前が下手から出てきてしまう。
山「出てきちゃってるじゃねえかよ!ずさんだぞお前!」
やべっという表情を見せたものの、開き直って笑顔になる。
門「はっはっはー!俺ならここだぁ」*5
山「知ってるよ!…(笑)」*6
3人目の門前に殴られる山辺
大量に門前が出てきて、囲まれてぼこぼこにされる山辺*7
ぴょんぴょんしながら山辺を踏んづける本物*8
俯きに倒れて手を伸ばす山辺を放置して、上手へはけていく複数の門前。
山「くっ...門前..いや門前たち、め...」
ばたっと倒れる。

山辺、むくっと起き上がる。
山「うん。今回の出来はまあまあだったな。それにしても…考えてみるとジレッタで起こる事は、どれも俺の過去の漫画のアイデアだ」
ぶろろろろというヘリの音。
山「レスキュー隊か!?おーいここだ!ここだ!…まさかこれも、ジレッタか?」
暗転。

奥から段を降りてくる門前とチエ、記者に囲まれる。バスローブのようなコート?を着てサングラスのチエ、ふらふらなので門前に支えられて歩いている。
記「チエさん!ジミーとのご関係は!?」
記「ジミーが共演に応じた理由は!?」
二人、足を止める。
門「シンパシーです。二人は互いにしか分からないシンパシーを感じた、とだけ申しておきましょう」

門「会見で述べた通りです。小百合チエのデビューコンサートは正月二日。客演は、ジミー・アンドリュウス!」得意げな門前。
記「チエさん!一言意気込みをお願いします!」
チ「…お腹が…すいた……」
焦った顔をする門前。
門「さあ通してください!!」
記者たちを押しのけて下手へはける。

ソファーとテレビのセット。
下手から入って来る門前とチエ。
門「はあ、はあ…やったなチエ〜!俺たちついにここまで....!」
チエを抱きしめて左右に揺れる。チエはフラフラ。
門「??おーい、どうしたー。まるで風船を抱いてるみたいだぞー(笑)」
チ「そりゃだって!」
門前を振り払う。
チ「もう3日も何も食べてないんだもの!」
門「許してくれチエ…!」
チエの手を両手で包む。
門「お前の努力には頭が下がるよ....!でもこれもお前をスターにするための試練だと思ってくれ」
チ「スターになる前に餓死しそうです!」
門前、腕時計を見て「オウ?そろそろさっきの会見が始まる時間だなあ♪ハハッ*9」と上手側テレビに近づいてスイッチのところをテンッと押す。
ご機嫌でソファーに座り、隣に座れと手で座面をぽんぽん叩きながらチエを見る。隣に座ったチエの肩を抱く。
テレビの映像は背景のスクリーンに流れる。放送されたのは、会見のニュースではなく、山辺が救出されたニュース。「港区にある建設中のビルの地下から…」
工事現場から担架に乗せられて搬送される山辺の映像。*10
「よかったわねぇ…」「3ヶ月も?ご飯はどうしてたのかしら」と感想をつぶやくチエの横で、青ざめていく門前。立ち上がる。
チエ、首を傾げながらソファーごとはけていく。

門「…山辺だ!あの男、生きてやがったのか...!回復したらあの晩のことを話すに決まってる…!俺のことも、小百合チエの正体も!クソ…!成功はもう目前だってのに!!」
膝をついてうなだれる門前。
暗転。

舞台両端に「1月2日 〜〜」の文字。
シルエットが浮かび上がってジミー登場。

『偽りの代償』

“昇り続けるしかない”
ジ「さぁ次はきみの番だ。プリンセスチエ」
白いドレスのチエ、中央で待つジミーのもとへ。
下手に門前、上手にマネージャー。
キス。
「おっ?」という顔でニヤついて目をそらす門前。「おい」という顔で止めようとするマネージャー。を、目で制するご機嫌な門前。
ガブッ(S.E.)
チエがジミーの口に食いついている。
門「おいやめろ!ジミーの舌は食いもんじゃない!」
慌てて駆け寄る門前。
マ「なんてキスだ!!」
睨むマネージャー。

“食われた!”
“何かが喉に”

“Keep on lying…”
小さな歌声が聴こえてくる。
チ“聴き覚えのある甘い調べ”
耳に手をやって耳をすませるチエ。

門“なんでもいいから止めてこい”
下手を指差す門前。チエ、下手へはける。門前も追う。

ジ“歌おう 地声で”
マ“それだけはやめてくれ”

ジミーの機械が爆発する。
マ「もう限界だ!行こう!」
ジ「それじゃ契約違反だろ!」
マ「こんなところでお前のスター生命を終わらすわけにはいかない!」

マ“Keep on lying”
ジ“これ以上もう進めない…”
マネージャーを振り払って下手へ移動するジミーと追うマネージャー。
マ“Keep on lying”
ジ“どれほど高い場所に来た?”
マネージャーに向かって問いかけ、再び振り払って一段上へ移動するジミー。
マ“Keep on lying!”
ジ“落ちたら砕け散るだろう”
マ“Keep on lying!”
ジ“まだ昇れと言うのかい?”


下手手前から門前とキミ子。
キ“止まったわ!”
門“またその顔か!”
キ“お水をたらふく飲んだから”
門“その顔で”
マ“その声で”
二人“ステージに立った途端に 魔法が解ける”

ジミーとキミ子、中央で二人で歌う。
“魔法をかけて”…

マネージャーに連れられて上手へとはけていくジミー。

門「5分で元に戻れ!その間ジミーに繋いでもらう!」
チエを下手へはけさせる。
門「なあジミー!」振り向くが、ジミーはいない。「…ジミー?ジミー!どこだジミー!!」

ジミーのファンが恨めしげに後ろから出て来る。
“ジミー!ジミー!ジミーの歌を!”
門前一段目に逃げ、
“いない…消えた…”
チエのファンも出てくる。門前二段目に駆け上がるがそこでジミーのファンに囲まれる。
“チエ!チエ!チエの顔を!”
“そっちも準備中だ!”

“謝罪しろ!” “土下座しろ!”
囲まれ、ヒィヒィ言いながら一段目に転がり逃げる門前。
4段目に竹中郁子が登場する。
へたり込んでいる門前、怯える。
“頂点までの長い旅路をあざ笑う”…

“やめろ…やめてくれ!”

“責任を果たせ!責任を果たせ!”

歌が終わる頃にリエの部屋のセットが出てくる。

*1:テープが授けた、でジミー、マネージャーにウインク

*2:柱に付いているボタンの説明書き

*3:花瑛ちほさんのしらけ方が最高にかわいい

*4:大阪では?グリコのポーズ

*5:千秋楽では東京序盤と同じく「俺ならここだ!」とはっきり言った。

*6:門前さん可愛いof可愛いof可愛い…と思ってたらここで、東京公演終盤あたりから山辺が「可愛いな!」とつっこむようになった模様by5月末公演の人、6/13公演の人 千秋楽ではなし

*7:この間に山辺、元の汚い方の衣装にチェンジ

*8:〜東京25日あたりまで。途中から一人離れてにやにや眺める感じに変更された模様by5月末公演の人。千秋楽ではふたたびぴょんぴょんに戻っていた

*9:ルイージみたいな笑い方(伝わらない)

*10:レトロ加工されたイラストっぽい映像

上を下へのジレッタ①

車のエンジン音。
劇場内が徐々に暗闇に包まれる。

門前登場。

“星をかき消すネオンサイン”
上を見上げている。
“月を挟んだビルディング”
後ろを向いて、周囲を眺めている。
“永遠なる”
正面を向いている。
“右肩上がり”
左肩を上げる振付。

“一億人に*1約束された明るい未来”
“一億人にもれなく当たる明るい未来”*2

曲調が変わる。
顔つきも鋭くなる。
後ろを向いて手を広げる。ビルのセットが倒れて来る。門前のところだけかぶらない。風圧ではためくコート。
門前、コートを脱いでうしろに投げ捨てる。
“すべてまやかし…”
踊る。

コーラス:スタッフ、黒いドレスにきらびやかなストール(モールみたいなもの)を首にかけた女性歌手たち。

“稀代の詐欺師 天才マジシャン”
ざわめくテレビ局の中心でスッと立って顎に指をあてている*3

“指が鳴ったら目を開け”
右手を上げて指を鳴らす。

歌手がセット上方へ。

“歌の間は休憩時間”
段に座ってスタッフとおしゃべり。

“列を乱すな”
緑のストールの歌手*4が右端に追いやられてうんざりしている。

“事務所の序列を”(2回目)
鳴り響く電話の音。
上からむっつの黒電話が下りてくる。
左端、3番目、4番目の受話器をとりながら
“下品?”
“汚い?”
“教育上?”

“あんた、ゆうべの夢につべこべ言うか?”
舞台手前中央、客席側を向きながら。

曲終了。

プロデューサー「CMでーす!」

プ「門前まずいぞ今のオープニングは!なんでよりにもよって、え!?竹中プロのタレントをあんな端っこにー!?」
下手奥から竹中郁子と秘書登場。
竹「説明してくださるかしら!?」
プ「ほら噂をすれば来たぞ来たぞ竹中社長が!はいぺったーん!」
プロデューサー、ジャンピング土下座。
門「説明?」
秘「本番中に立ち位置を変更した理由だよ!」
門「説明するまでもないでしょう。おたくのタレントがあまりにも見苦しかったのでどいてもらったまでです」
竹「うちのタレントが見苦しい?」
門「TVは常に現実離れしたものを提供しなきゃいけないんです。なのにあんな、近所の娘でもできる歌と踊りをやられちゃったら」
竹「それを現実離れして見せるのが、あなたの仕事でしょ?」
門「せめてガラスならダイヤに見せられなくもないですが*5、しかしその辺に転がってるただの石ころじゃあ*6、何をやっても石ころでしょう!笑」
竹「それはあなたが…無能だからじゃないの?」
あ?と社長を睨む門前。
竹「あなた、今すぐこの仕事をやめた方がいいわ。そうでしょ?(とプロデューサーに)」
プ「門前をクビにしろと…?」
門前、動揺している様子。
プ「しかし生意気な奴ですが、腕はいいんです」
文字通り門前の肩を持つプロデューサー。
満足げな表情を浮かべる門前*7
竹「その男をクビにしないなら、すべての番組からうちのタレントを引き上げます」
プ「門前、貴様はクビだ!」
門前が持っていたヘッドフォンを奪うプロデューサー。
門「…ええ!?」

うなだれている間にセット転換。ソファ、机、タンス、ソファとそこに座ってティーカップを持っているリエ、が流れてくる。
リ「番組見たわ。竹中社長を怒らせなくてもクビになってたかもね」
門「また一から出直しだ」ジャケットを脱ぐ。
リ「大丈夫よあなたなら」
門「いい機会だリエ、お前とも離婚しよう」
リ「ゲホッ!(むせて口元を押えながら)何がいい機会なの!?」
門「大きなことを始めるには、大きな犠牲が必要ってことさ(とポケットから出した離婚届をリエに見せる)」
リ「(立ち上がって)既に離婚届まで!?」
門「既にサインもしてある」
リ「(受け取って)逆らっても無駄ね…あなたがそう決めたのなら…」
門前、得意げな顔でソファに座り足を組む。
リ「また誰かと結婚するの?」
門「さあな。したって長続きしないだろうよ」

電話の音。
門「はい門前。…視聴率?」
上手端の手前にプロデューサーが出てきてスポットライトが当たる。
プ「この間の歌番組がビデオ速報で視聴率52%も取ってるぞ!これは快挙だ!」
門「それで?」
プ「それでって…(笑) 社長が今すぐお前に会いたいと言っている」
門「会う理由がないねぇ、俺はもうクビになったんだから!」
吐き捨てるように言って受話器を置く。
プ「門前…(笑)…おい門前?門前!」
時空を超えて門前に近寄ろうとするプロデューサー。リエに🤚と止められて、肩を落としながらはける。

リ「昔、オーソンウィルズっていう俳優がいてね。彼は天才過ぎて、仕事も結婚もうまくいかなかったそうよ。きっとあなたもそうなんだわ」
門「サインは書けたのか」*8
ソファに座ったまま離婚届を受け取ろうとする門前。
原稿の催促をしにきた編集者が上手から登場。
編「こんちにはー!小説文鳥です!」
リエ、門前の次の行動を察してソファに座り込む。
門「まずい…!リエ、口述筆記だ!」
リ「いやよ!私もうあなたの奥さんじゃない」
腕を組むリエ。

門「銀座に着いためぐみは、来るともしれない高橋を思いながら、ぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺらぺら」
上手から下手へ、下手から上手へ、客席側の宙を見ながらぺらぺら言う。
右手を挙げて何かに耐えるリエ、勢いよくテーブルにかじりついて速記し始める。
門「「信じていいの?」めぐみは小さく呟いた。…続く!」
リ「悔しい!いつもの癖で速記しちゃったわ」
門「ご苦労」
編「ありがとうございます!しかし先生はタフですねぇ。テレビの演出をする傍ら、小説もエッセイも評論もこなすってんですから」
門「そういえばおたくの雑誌、芸能にも強かったよな。何か竹中プロについてネタはないのか」
編「竹中プロ?あ、そういえば、春海渚って歌手ご存知です?」
門「ああ、顔を見せない覆面歌手っていうアレか」
編「そいつを最近、竹中プロはクビにしたそうですよっ」
門「理由は」驚きながら食いつく。
編「さぁそこまでは(笑) では、次号もよろしくお願いしまーす!」
編集者、上手へはける。

門「春海渚、ねぇ…」
リ「竹中プロに復讐でもするつもり?」
門「コケにされたまんまじゃいられねえだろうよ」
リ「分かるわ。私も同じだもの」
リエ、立ち上がって門前に近づく。
リ「執念深いのよ」
門前たじろぐ。
門「…この部屋とここにある物はくれてやる。もう会うこともないだろうよ」上着を手に取り、リエの横を抜けて上手側に走り去る。
力が抜けたようにソファに座るリエ。
リ「…会うわよ、きっと」
リエごとセットが横にはけていく。

手書きのピアノの後ろに座る門前ごとセットが流れてくる。
チエの声「失礼します、春海渚です」
門前立ち上がり、下手に向かって
門「ああ、よく来てくれたね」

渚登場。

門「!!!…き、きみが!?」

渚「春海渚です。本名は越後君子って」
門「どうでもいいよっ!」
渚「ええっ」

渚「人前に出るときはこういうのを着けてたんです!」
門「納得だよ…!」
リ「?」
門「竹中プロをクビになった理由は!」
渚の顔も見ず、頭を片手でかきむしりながらやけくそ気味に聞く門前。
渚「私の田舎で、リサイタルがあったんです。アイドルになった姿を、どうしてもお父ちゃんに見せたくって。そんだから私、曲の途中でこの仮面を!」
門「取ったのか!?」
渚「そしたら不思議なことに!会場中が笑いに包まれたんです」
門「不思議でもなんでもねえなー」
渚の顔を見ながら嫌味っぽく言う門前。
渚「どういう意味ですかっ」
門前、渚の後ろ側へ回り、愛想笑いを浮かべながら肩に手を置いて
門「君、整形する気は?」
渚「ハハハハハ!」
門前を突き飛ばす。門前転がる。
渚「ありませんよう。こう見えても私、ミス丸太ん棒なんです」
門「ミス丸太ん棒?」
渚「私の田舎の伝統的なミスコンで、丸5日こう、丸太ん棒みたいに突っ立って、その間に言い寄ってきた男の数を競うんです」
門「君に言い寄った男がいたってのか」呆れたように。
渚「いたも何も断トツの54人です!」
門「数え間違いだろ」
門前、上手側のピアノに向かう。
渚「間違えてませんっ!」
門「あーもういいから、歌を聴かせてくれ」
渚「その前になにか食べさせてください…!失業してからロクなもの食べてなくて」
門「テストが終わったら食わせてやる!」
渚「本当にお腹が空いて」
門「ここにきみの出したシングルの譜面がある!さあどれ歌う!」
渚「出前を取ってください!」
門「ああもうこれでいいや!黄昏のフィナーレ!」
渚「ラーメンかお蕎麦で結構ですかr I love you…」
正面を振り返って歌い始める渚。

“Do you love me noodle?”1回目
門「ぬーどる!?」

“あなたの好きなたぬきそば”
門「お前はなんの歌を歌ってるんだ!?」
渚「何か食べさせてくれたらもっと上手に歌えますぅ!…I love you…」

“Do you love me noodle?”2回目
門「ぬーどる!?」

“ズズゾゾゾーッ”
門「蕎麦をすするな蕎麦を!怒」

“それが私の それが私の”
渚、右左によたよたし始め、曲が終わり倒れこむと同時に舞台暗転。

渚が美女になっていて驚く門前。

門「…君!!その顔!!」
渚「また顔の話ですか!?」
門「だってまるで別人だぞ!」
スライディングして顔を覗き込む*9
渚「そりゃ何も食べてませんから…」
門「どういうことだ!」*10言いながら転がって身体を起こす門前*11
門「はああ…!ミス丸太ん棒!」
渚「ハイ!」倒れ込んだまま手をすっと挙げる。
門「そんときも腹は減ってたか!?」
渚「そりゃ5日間も飲まず食わずですから…」
門「からくりが分かってきたぞ!つまり君は、腹が減ると美人に変身する。しかし竹中プロはそのことを知らなかった。所属している間は、曲がりなりにも食えてたわけだからな」
渚「お水勝手にいただきます!」
門「ちょっと待てぇ!!」
渚「いいじゃないお水くらい!」
門「俺と契約しよう、渚!」
渚「えっ…じゃあ、雇っていただけるんですか!?」
門「となると芸名を変える必要があるな…。小百合チエってのはどうだ!?」
渚「ハハハハハ!」指差してかん高く笑う。
門「何がおかしい!」
渚「すみません」手を口に当てる。
門「俺に任せろ小百合チエ。君を必ずトップスターにしてやる」
手を握り合う二人。記者が集まってきて場面はデビュー記者会見に。チエはげっそり顔に。

門前、スタンドマイクの柄を触りながら
門「この度わたくし門前市郎は、芸能事務所門前プロを立ち上げました。そのお披露目を兼ねて、弊社の所属タレントを紹介します」
チ「小百合チエでございます」
どよっとなる記者たち。
「すごい美人だ!」「門前のやつ、竹中プロに対抗するなんて言ったときはなんの冗談かと思ったが」「これはひょっとするとひょっとするわね!」
おじぎと同時に鳴り響くお腹。
記「…なんの音だ?」
門「…っ会見は以上です!」
チエを連れて上手側にはけていこうとするが、記者が質問を投げかけながら後を追う。
「小百合さんの今後のスケジュールは!?」「デビュー曲は!」「コンサートのご予定は!?」
門前だけマイクに戻る。
門「うちはタレントを安売りしませんよ。最初から大勝負に出るつもりです。例えばそう…ブロードウェイのジミー・アンドリュウスと共演させるとか」
笑いが起こる。門前、冷めた表情で
門「何がおかしいんです」
ひときわ高い笑い声をあげながら、竹中郁子と秘書が下手1段目から登場。
竹「これがおかしくないってんなら、あなた正気じゃないわね!」
門「竹中社長、いらしてたんですね。笑」
竹「あの世界的スターが日本の無名タレントと共演するわけがない!」
門「何故そう言い切れるんです?」
秘「うちだって相手にしてもらえないんだ」
記者たちがへえ〜とささやき合う。クスクス笑っている。
竹「余計なこと言わなくていいっ!」
門「それはあなた方が…(フッと笑って)無能、だからじゃないですか」
では失礼、と今度こそはける門前。記者たちもそれを追ってはけていく。
竹「あんの若僧め〜」
マイクを取って上手を睨みつける竹中社長。
竹「見てくれだけでスターになれるほど、芸能界は甘かぁないわっ」

セット転換、クレオパトラのような格好で撮影しているチエ。お腹の音が鳴り響いている。
門「もっと尻を突き出せ!」「胸を寄せろ!」「そんで腹を黙らせろ!」
チ「だったら何か食べさせて!」
カメラマン「はいこっち向いてー」

カ「いやぁ、いい仕事ができました」
門「すぐにブロードウェイのジミーに送ってくれ!」
カ「かしこまりましたっ!」
カメラマンが出ていこうとすると扉が開き、山辺が飛び込んでくる。扉に激突して倒れるカメラマン。
山「キミちゃん!」
チ「オンちゃん!」
ハグする二人。チエの肩に上着をかける。
チエ「オンちゃん優しい♡でもどうしてここに?」
山「テレビでキミちゃんの記者会見を見たんだよ」
門「誰なんだ君は…!いや、そんなことより早く写真を!」*12
ひょうきんに立ち上がって門前を見つめるカメラマンとスタッフ。
門「…早く行けよ(笑)」
*13
門「誰なんだよお前は!」*14
山「俺が誰か知りたいか!俺の名は!山辺音彦だ!」
チ「わたしの幼馴染なんです!」

“ゆらり揺られて夜行列車”
チエ、1段目へ
“俺は漫画家君は歌手”
山辺も1段目へ。

“食わせてやりたい”“食えなくなるぞ”の応酬をしながらチエにパンやバナナをあげたり取り上げたりする門前と山辺

曲終了。*15

山「あんたがキミちゃんを虐待してるのは一目で分かった。こんな貧相な顔になっちまって…」
チ「見苦しい姿を見せちまったわね> <」
門「見苦しいのは元の顔だよ」
山「俺は元のキミちゃんの顔が好きだ!」
門「そっちが好きなのは世界中で君だけだ!」
山「えっ」
門「とにかく!もうすぐインタビューの記者が来る。外で話をつけようじゃないか」
山「望むところだ!」チエから上着を取り去る山辺
チ「寒っ。…先生!オンちゃん!」
山「キミちゃん(ドアの前で振り返って)戻ったら二人で腹いっぱい食べような」
チエ、追いかけるも扉が閉まる。
扉にすがりついてへたりこむ。
チ「オンちゃあん!」
暗転。

セット転換、工事現場の前。1段目下手から言い合いながら二人。
山「おい!どこまで歩かせるつもりだ!いい加減話を付けようじゃねえか!」
門「だってここはビルの工事現場だぞ!」
山「いいか!?俺と彼女はなあ!」
門前、2段目へ移動。
門「婚約してるんだろ!けど2人して金がない。だったら大人しく彼女の成功を待ちな!」
山辺も二段目へ。
山「このやろ〜!こうなりゃ話は別だ!いいか!?俺はなぁ、」
工事の音。身振り手振りで熱弁する山辺と、聞こえなくて「え?え?」となっている門前。
音が止む。
山「ウィーーーー…カシュー…ってな…。それについてどう思うんだ?門前さんよぉ!」
門「…すまん…全く聞こえない」
山「なんだとぉ!?人が真剣に話してるってのに!くそー、もう二度と言わねえからな!俺は」
工事の音。
山「ィーーーカシュー…ってな!さぁ答えを聞かせてくれ!」
門「……ごめん!もう一回頼む!」
山「このやろ〜!ふざけやがって!」
門「だって音がさ!ちょ、落ち着けって!」
言い合いながらセットの上へ。
門「おい、危ねえぞ!下見てみろ、下!」
山辺が襲いかかる。門前よける。山辺、手すりに激突。
山「やり過ぎだぞ!」
門「なんもやってねえよ!」
山辺、カマキリのようなポーズで門前ににじり寄る。
門「なんだそれ!ちょ、落ち着け、」
山辺に抱きつかれる。
門「離せよ!」
振り払った勢いで山辺がチェーンを突っ切って落下。
門「山辺ー!!おい、返事しろ!山辺!!」
工事のおっさん二人が階段を上がってくる。
お「あんた、こんなとこにいちゃあぶねえぞ」
お「そうだ、あのすごーーーく深い穴に落ちたら命がねえ」
門「命が!?」
お「そうだ…だから今から埋めるんだ」
門「埋めるだって!?」
お「なんだ兄ちゃん、あのすごーーーーく深い穴に、何か落としちまったのか?」
門「いや…別に」
お「そうか…それは、すごーーーくよかった…」
お「くれぐれも落とすんじゃねえぞ、自分自身だけは」
げぇっほげぇっほと笑いながら階段を下りて行き、見えなくなる作業員。

門「山辺が死んだ…どうする俺!?…いや死体は見つからねえ。穴はふさがれちまうんだ!哀れ山辺音彦は、ただの行方不明者ってことになる…。いや、だがチエになんて説明する!?彼女だけは俺と山辺が一緒だったことを知ってる!どうする門前…!」
ナレ「そうして悶々としながら1週間が過ぎたある日のこと」
電話の音。
門「はい門前」
うなだれながらその場で受話器を取る。*16
門「何…?ジミーが!?チエに食いついたかァ!」

*1:人差し指を上に上げる振りつけ

*2:ファルセットめっちゃ綺麗泣ける

*3:とにかくかっこいい本当にかっこいい

*4:花瑛ちほさん

*5:社長に近づく

*6:社長の後ろを通って上手側に立つ

*7:かわいい

*8:めちゃめちゃ満足げな顔

*9:面白かっこよくて毎回笑いが起こる

*10:どーういうことだアーみたいな、低いうなり声

*11:笑いが起きる

*12:ここは記憶にかなり自信がない

*13:山辺初登場のシーンでカメラマンさんたちが走って出ていくじゃないですか。その時、門前が急かすんですけど結構長いこと見つめあってて門前というか横山さんが「はよお!!」って言ってて全身の血液が逆流しました。カンパニー仲良すぎか」by6/13公演の人。千秋楽でもこんな感じで素の横山さんっぽかった。

*14:全く記憶に自信がない

*15:最後3人並んで歌い終える時、門前は右手にバナナをかかげて左手にクロワッサンを握っててなんかかわいかった

*16:テンポを悪くしないための上手い演出だと思っていたら回を重ねるごとに笑いが起こるようになって来たので最終的に面白いシーンとして記憶に残った